世代間の価値観の違いが話題となる昨今、世代を超えて理解し合う、歩み寄ることが必要だということは、ある程度世間では常識となりつつあるように感じます。
とはいえ、高度な情報化社会とAIやテクノロジーの進歩により、1世代違うだけでも、その育ってきた背景は大きく異なり、それによる価値観の違いは増す一方です。
このような状況で、となりの世代の価値観を自分に落とし込んで考えるのは容易ではありません。
違う世代の価値観を理解する方法のひとつとして、「共通点を探す」というものがあります。
世代に限らず、国籍、人種の違いによる価値観の違いをうまく乗り越える際にも、共通点探しは有効なので、とても汎用性の高いスキルと言えます。
今回はZ世代と団塊世代の「世代間の違い」ではなく「世代間の共通点」に着目し、具体的な事例なども用いて「共通点から価値観を理解していく方法」について深堀りしてみようと思います。
共通点を導き出すために、まずZ世代、団塊世代のそれぞれの背景について、改めて確認してみましょう。
団塊の世代と呼ばれている世代に属する方々は、戦後の混乱期に生まれました。当時、物資が不足し食べるものにさえ苦労する、という時代です。
小さい頃にこのような世界で生き抜いてきたということを考えるだけでも、どのような価値観を持ちそうか、という想像が膨らむかと思います。
<企業戦士>
団塊世代の背景といえば、その猛烈な働き方が特徴的です。「24時間戦えますか」という言葉が出回っていたということに象徴されるように、会社への忠誠心が高く、長時間労働も厭わない働き方が美徳とされていました。人にもよりますが、会社を優先して家庭を疎かにしていた方もいるようで、一部後悔の声もきこえています。
<過密な教育環境>
現代社会では少子高齢化により、学校の1クラスの人数が極めて少なくなるなど影響が出ていますが、団塊世代の学生時代は逆に過密すぎる教室が多かったようです。1クラスが50~60人ということもあり当時からたくさんの同世代に囲まれて育ってきました。仲間が多くて良さそうな反面、勉学において周囲との厳しい競争にさらされているという状況もありました。
<学生運動>
現代では学生運動に参加したことがない人がほとんどですが、1960年代後半には学生運動が激化していました。きいた話によると、カフェにでも行くような軽い感覚で、火炎瓶を投げに行くような、そんな時代だったそうです。今の団塊の世代は、学生の時から政治や社会に対して非常にエネルギッシュに活動していたんですね。
Z世代と呼ばれている若い世代に属する方々は、物心ついた時からテクノロジーに囲まれて生きてきました。携帯電話はもちろん、スマートフォン、インターネットは当たり前で、SNSにも小さい頃から触れています。電話のマークがなぜ受話器のマークなのか知らない、という人も珍しくありません。
<SNSと個の確立>
単に連絡手段としてSNSを利用しているかというと、話はそう単純ではありません。SNSを通じて「自分と同じ価値観を持つ人と繋がる」のがポイントであり、これにより学校以外のコミュニティを持つことが容易になりました。多様性への理解が深いのも、SNSの影響が非常に大きいです。
<現実主義>
Z世代は「失われた30年」や相次ぐ自然災害の中で育ちました。リーマンショック、東日本大震災、新型コロナウィルス、といった未曽有の事態を多感な時期に経験しています。「明日何が起こるかわからない、絶対なんてない」という感覚が根底にあります。そのため、浪費を避け、貯蓄や将来への備えを重視する現実主義者が多いのも特徴です。
<情報収集能力>
検索エンジンを使いこなすのはもちろん、昨今の様々なAIやSNSも自在に使いこなします。特にSNSのタグ検索や動画で情報を得るなどに長けており、このスキルは他の世代ではあまり見られないスキルです。誤った情報に触れる機会も当然多いため、フェイクニュースを見抜くリテラシーが自然と養われているのも特徴です。
ここまで、Z世代と団塊世代のそれぞれの育ってきた背景と、その背景から形作られた考え方や価値観を確認してきました。
ここからは「違い」ではなく、「共通点」を考えてみましょう。育ってきた時代背景も社会情勢も、持っている価値観もまるで違うこの2つの世代には、意外な共通点があります。
両者の共通点で挙げられるものとして、「既存で動いている社会システムへの根源的な不信感」があります。わかりやすく言うと、「親世代が作った社会システムを疑っている」ということです。
<団塊世代>
戦後の焼け跡から立ち上がった親たちの、古い家父長制や「軍国主義の名残」を否定し、学生運動や全共闘を通じて新しい価値観を模索しました。これは親世代が作った社会を疑っていたからこそ、起きた行動です。
<Z世代>
バブル崩壊後の停滞を見続けてきた親たちが築いた「終身雇用」や「学歴至上主義」の崩壊を目の当たりにし、既存の正解を信じることができなくなっています。親たちが信じて行動し、作り上げてきた社会を、今まさに疑問のまなざしで見ているということです。
こうしてみると、社会への疑問、それに対する反抗はとても似ているように感じます。学生運動のような激しい行動は、昨今見受けられませんが、SNSなどを見るとそれがインターネットの世界へ移行しているだけのようにも感じます。
似ているのは、ネガティブな側面だけではありません。抑圧されていた個人の個性が、一気に開放されたという点でも2つの世代は非常に似ています。
<団塊世代>
モッズ、ヒッピー、ミニスカート、グループサウンズ、など、それまでは「お国のため」という社会情勢下で一定の抑圧があった個性が爆発しました。ジーンズやビートルズなど海外の新しい文化を、若者独自の文化、として日本に定着させた最初の世代でもあります。
<Z世代>
「マニュアル通り」を嫌い、多様なSNSを通じて自分らしさを表現しているのは言うまでもありません。パーソナライズされた表現を追求する姿勢は、かつての若者文化の爆発と構造的に似ていると言えます。
どちらの世代も、個性が集団の中に埋もれてしまうことを嫌い、自己表現をいかに上手に行うか、ということが注目されていました。
現代では「推し活」という言葉で浸透していますが、特定のインフルエンサーやタレント、キャラクター、有名人などの応援やそれに関連する「推す」という活動は、今に始まったことではありません。
<団塊世代>
映画スターやアイドルが流行し、「追っかけ」という言葉で現代の推し活に相当するような活動が行われていました。インターネットはありませんので、コンサートやライブ、「出待ち」、レコードの買い占め、などという形で、ファンは物理的に応援に駆け付けるというスタイルでした。
<Z世代>
アニメ、アイドル、Vtuber(バーチャルユーチューバー)など多岐にわたる「推し」が存在しています。活動内容としては、推しを身近に感じるための「ぬい活」、グッズを自分流に飾る「デコ」、アクリルスタンドなどがあり、SNSで定期的に話題になっています。
自分の「好き」を通じて自己肯定感を高め、社会や他者とつながりをもつ、という行動はZ世代だけではなく、団塊世代の多感な時期でも見られるものでした。団塊世代の熱狂的なファン活動は、現代の推し活の土台になっていると考えることができます。
ここまで団塊世代とZ世代の共通点を見てきました。特定の一部分だけが特化して似ている、ということではありません。根底にある社会への不信感や自己表現、推し活など、一般的に多くの人が持つであろう感覚も、よく見ると似ているということがわかりました。
団塊世代が自由を求めて戦ったこと、その結果として築かれた消費社会。その果てに生まれたZ世代。そんなZ世代も新しい自由を求めて「パーソナライズ思考」「エシカル消費」といった行動を起こしているということ。
両者は、社会をもっと良くしようとする意志、に動かされているように感じます。団塊世代はエネルギーに満ち溢れていた時代を振り返り、Z世代は自分の内なる熱量を団塊世代の歴史に一度当てはめてみることで、どの世代よりも共鳴し合えるポテンシャルを秘めています。世代間の相互理解が進むことで、世代を分けて対立するのではなく、より良い社会に向けて手を取り合い、協力できる未来に近づくことができます。
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