現在、日本の職場にはベテラン層(60代以上)、バブル・就職氷河期世代(40代〜50代)、ミレニアル世代(30代)、Z世代(20代)の大きく分けて4つの世代が共存していると言われています。
これほどまでに多様な背景を持つ人々が同じ空間で働くことは、歴史的にも稀なケースです。それぞれの世代が当たり前としてきた教育、経済状況、価値観が根本から異なるため、コミュニケーションに齟齬が生じるのは当然の結果といえます。
世代間ギャップを単なる「最近の若者の特性」や「古い考え方」として片付けてしまうのは危険です。世代間ギャップの問題を正しく認識し、その背後にある理由を理解することで、組織の多様性を強みに変えることができます。
今回は具体的な18の事例から、世代間ギャップの詳細を探るとともに、必要になる世代間コミュニケーションについて考えていきたいと思います。
世代間ギャップ、といっても様々なものがあります。全てを並列的に考えるよりはカテゴリごとに分けた方が理解がしやすいです。今回は、コミュニケーション、仕事の進め方、価値観、IT、の4つのカテゴリに分け、具体例をご紹介します。
職場でのコミュニケーション手段において、最も顕著な差が出るのが「電話」と「チャット」の扱いです。
<電話連絡の是非>(事例その1)
ベテラン層は「電話の方が早いし誠意が伝わる」と考えますが、若手層は「相手の時間を奪う行為」と捉え、テキストでのログが残るチャットを好みます。ポイントとして、Z世代は効率だけを考えてチャットを選択しているわけではない、ということが挙げられます。
<報連相のタイミング>(事例その2)
上司は「何かあればすぐに口頭で」と求めますが、若手は「整理してからチャットで」と考え、報告が遅れているように見えることがあります。失敗に対する考え方から、報告の前の準備、連絡の前の準備を行う、など報連相の前段階の行動に違いがあるようです。
<絵文字・スタンプの解釈>(事例その3)
チャットでの「承知いたしました」という文言に対し、若手は冷たい印象を受けますが、ベテランは丁寧な返信だと捉えます。逆に若手が使うスタンプに対し、ベテランは「不真面目だ」と不快感を示すケースもあります。会社よりもコミュニティへの帰属意識が高い若い世代において、感情を表現するスタンプはとても重要な意味を持ちます。
<飲み会の誘い>(事例その4)
業務外の交流を「チームビルディング」と考える層と、「プライベートの侵害」と捉える層で明確に分かれます。 ベテラン層では業務外の交流を仕事のため、と考える傾向がありますが、実はベテラン層の方が飲み会に参加したくない比率が高いというデータもあります。
育成や業務遂行のプロセスにおいても、教育を受けてきた環境の差が色濃く反映されます。
<修業期間の捉え方>(事例その5)
ベテランは「下積み時代に見て学ぶこと」に価値を感じていますが、若手は「無駄な時間は省き、最短でスキルを習得したい」と考えます。時代の変化の流れが速くなっていることで、その変化に対応しようと効率のよい方法でスキルアップを目指しているようです。
<完璧主義/スピード重視>(事例その6)
この観点は個人によりかなり異なりますが、ベテラン層は部下を率いてきたこともあり
、「報告や相談は適宜すばやくしてほしい」という考え方を持っていますが、若い世代は失敗をおそれる傾向から「完璧にするまで提出できない」といった状況に陥ることがあり、報告が遅れる場合があるようです。ですが状況によっては、失敗したくないという感情が「過度な確認とフィードバックの要求」になることもあるようで、「上司に報告したのに回答がなかなかこない、もっと早く確認してほしい」という声も上がっています。
<勤務時間の概念>(事例その7)
長時間労働を「熱意の証」とする価値観に対し、定時内での成果を最大化し、時間外労働を「スキルの低さ」や「非効率」とみなす価値観が衝突します。勤務時間内に仕事を終わらせることができないと能力が低く見える、というのは欧米の仕事に対する価値観に非常に近いです。
<マニュアルの必要性>(事例その8)
暗黙の了解を重んじるベテラン層と、全てを言語化し構造化されたマニュアルを求める若手層で、教え方のミスマッチが起きています。暗黙の了解については、組織またはチームの共通認識に支えられており、一定のチームにおいては非常に良く機能し、高い効率性を実現する場合があります。一方で、共通認識が浅く、目的に対する態度が異なる場合、うまく機能しません。また、育ってきた背景の異なる世代間で共通認識を育むのは容易ではありません。そのためマニュアル等を整備してほしい、と感じる若い世代が多いようです。
仕事に対する人生の優先順位や、キャリア形成の考え方も変化しています。
<帰属意識の差>(事例その9)
一つの会社に骨を埋めるという考えはもはや少数派であり、今の若手は「この会社で何が得られるか」という市場価値の向上を重視します。「とりコン」という「とりあえずコンサル」という言葉が一時期流行しましたが、やりたいことがない、というよりは、とりあえず素早くスキルを磨けそうなコンサルティング会社に入り、自分の市場価値を高くし給料をあげよう、という考え方かと思います。
<プライベートの優先度>(事例その10)
昇進のためにプライベートを犠牲にすることを厭わなかった時代から、QOL(生活の質)を維持できない昇進は断るという考えが広がっています。親世代が見せてきた背中が「仕事を優先して家庭を疎かにしていた」とネガティブな解釈をされることもあるようです。
<評価基準への不満>(事例その11)
年次や社内政治による評価を嫌い、客観的な数値や貢献度によるフェアな評価を強く求めます。若くして成功した体験の情報共有スピードが速いことや、マーケティング的な影響もあり、組織における実績や信用よりも、実務的な実力に注目してしまう傾向もあるようです。この点についてはZ世代に限ったことではなく、若い世代では一定の割合で発生するものとも言えます。
<転職に対する心理的ハードル>(事例その12)
転職を「裏切り」や「挫折」と捉えるか、「キャリアアップの自然なステップ」と捉えるかの違いです。転職サービスや退職代行など、転職を後押しする要素が増えたことも背景にあるかと思います。これらは需要に対して拡大したサービスですので、今の若い世代、というよりは、もともとビジネスマンが抱えていた転職に対する課題が一気に解消した結果、現在の状況になったという見方もできます。
ITの活用について、特にAI(人工知能)の活用能力は、世代間の生産性格差を広げる大きな要因となっています。
<情報検索のスタイル>(事例その13)
ブラウザで検索する層と、SNSや生成AIに直接答えを求める層で、情報の精度とスピードに差が出ています。普段からSNSを頻繁に使用している若い世代は、仕事上でもSNSを活用することがあります。SNSは最新の情報をリアルタイムで取得できるところに強みがあり、例えば大規模な通信障害はSNSの方が速く情報を取得できることが多いです。
<紙文化とデジタル化>(事例その14)
資料を印刷して確認することを好む層と、全てをタブレットやクラウド上で完結させたい層の違いです。紙は通信障害などの影響を受けないので確実、ということも言われています。ハンコ文化とも関連しており、業務上の承認フローに現在も紙での引き渡しが組み込まれていることもあるようです。
<生成AIへの抵抗感>(事例その15)
AIに仕事を任せることを「手抜き」と考えるか「クリエイティブな仕事に集中するための必須のツール」と考えるかという違いもあります。AIで達成された仕事を、たいしたことではない、知能ではない、と考えたくなる心理をAI効果といいます。これに似た心理として、制作物や完成品をAIが作ったということが分かると、なぜか低い評価をつけたくなる心理があるようです。
<セキュリティ感覚のズレ>(事例その16)
情報の扱いに対し、過度にアナログを信頼する層と、デジタルの利便性を追求しすぎてリスクを軽視する層の双方が存在します。ベテラン層は経験からリスクを考えて慎重に判断しますが、若い世代は大きな失敗などの経験値が無いため、直感的にリスクの重大性に気づきにくい部分があります。
世代間ギャップの本質は、それぞれが若く多感な時期に「どのような社会を生きてきたのか」という点にあります。
バブル世代やその少し下の世代は、右肩上がりの経済成長の中で、「頑張れば報われる」「会社に従えば生活が保証される」という成功体験が土台にあります。あるいはその名残を内面化しています。そのため組織へ尽くすというのが合理的な選択でした。
対して、就職氷河期を親に持ち、デフレ下で育ったZ世代以降は、「会社は守ってくれない」「安定は幻想である」という前提がデフォルトです。彼らにとっての合理性は、会社に従うことではなく、どこでも通用する個人のスキルを磨くことにあります。
また教育環境の差も無視できません。正解がある問題を早く解くことを求められた世代と、答えのない問いに対して対話を通じて納得解を探す「探究学習」を受けた世代では、合意形成のプロセスが根本的に異なります。
具体的な仮想事例を用いて世代間ギャップを埋めるための具体的な手順をご紹介します。これからの組織に必要な世代間コミュニケーションを確認してみましょう。
~事例~
40代のマネージャーAさんは、2年目のBさんに対し「もっと主体的に動いてほしい」と不満を持っています。一方、Bさんは「勝手なことをして怒られたくない、指示が不明確で困る」と感じています。
~解決のステップ~
観察:Bさんがどのような場面で立ち止まっているかを詳細に見る。
対話:Bさんの心理的ハードルが「責任範囲の不明確さ」にあることを、1対1の面談(1on1)で聞き出す。
共通ルールの設定:どこまでは自分で決めていいか、どのタイミングで確認を入れるかの「権限移譲の基準」を言語化する。
フィードバック:小さな自律的行動に対して、即座に肯定的なフィードバックを与える。
~事例~
60代の嘱託社員Cさんは、定時になっても帰らず、若手に昔の苦労話を語りたがります。20代のDさんは、仕事は終わっているのに帰りづらい雰囲気にストレスを感じています。
~解決のステップ~
観察:Cさんが「場所」や「時間」ではなく「承認」を求めていることを理解する。
対話:Cさんの豊富な経験を「苦労話」としてではなく、現代の課題に適用できる「知恵」として引き出す場を設ける。
共通ルールの設定:残業時間の削減目標をチーム全体で共有し、定時退社を奨励する文化を上層部から明文化する。
フィードバック:効率的に仕事を終えて帰るDさんのパフォーマンスを高く評価し、Cさんにもその合理性を説明する。
多くの現場では、コミュニケーショントラブルの原因が「言葉の定義のズレ」にあることが多いです。例えば「なるはやで」という言葉一つとっても、ベテランは「今日中」、若手は「他の作業が終わり次第」と解釈していることがあります。具体的な数値や期限を設けることが、トラブルの解消につながります。
世代間ギャップは、見方を変えれば「異なる視点の宝庫」です。 ベテラン層が持つ「長期的展望」や「リスク管理能力」と、若手層が持つ「スピード感」や「デジタルへの適応力」が組み合わさったとき、組織は急成長を遂げます。
大切なのは、相手を「自分たちとは違う」として遠ざけるのではなく、同じ目標に向かって走る仲間として尊重することです。
今回は世代間ギャップの具体的な事例からその背景、対策までご紹介しました。
歩み寄りは、どちらか一方が行うものではありません。ベテランが若手の新しい価値観に耳を傾けると同時に、若手もまたベテランが築いてきた経験の価値を再発見する。その双方向のコミュニケーション、相互理解こそが今後のビジネスシーンにおいて必須とも言えます。歩み寄る小さな一歩が、組織全体の大きな変革につながっていきます。
世代間の相互理解研修
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