2026.6.10 作成
2026.6.11 更新
「少し注意しただけなのに、急に元気がなくなってしまった」
「良かれと思ってアドバイスしたのに、なぜか距離を置かれてしまった」
このような経験をしたことはありませんか。近年、多くの企業でZ世代の若手社員が増えるなか、部下とのコミュニケーションに悩む管理職やリーダー層が増えています。これまで当たり前だった指導方法が通用しにくくなり、「何をどう伝えればいいのか分からない」と戸惑う場面も少なくありません。
しかし、Z世代は決して叱られることを嫌っているわけではありません。納得できる理由や具体的な改善策が示されれば、素直に受け止めて成長につなげる社員も多くいます。大切なのは、相手の価値観を理解したうえで、伝え方や関わり方を少し工夫することです。
今回は、Z世代の部下への叱り方と伝え方のポイントをはじめ、実際の職場で活用できるフィードバックの方法や主体性を引き出す育成のコツについて解説します。
目次
・Z世代の部下への叱り方と伝え方が難しい理由
・Z世代に響く伝え方の3つの基本原則
・Z世代の部下が納得する叱り方のポイント
・Z世代を叱るときに活用したいDESC法
・DESC法を活用した叱り方の実践例
・Z世代の主体性を引き出す育成方法
・Z世代の部下を育てるために大切なこと
Z世代の部下への指導が難しいと感じる管理職は少なくありません。その理由の一つは、従来の指導方法が通用しにくくなっているためです。Z世代は仕事の目的や背景への納得感を重視する傾向があり、「まずは言われた通りにやる」という考え方だけでは動きにくい場面があります。
また、心理的安全性を大切にするため、強い口調や感情的な叱責を必要以上に重く受け止めてしまうこともあります。だからこそ、Z世代の部下を育成するには、頭ごなしに叱るのではなく、改善が必要な理由や具体的な行動を分かりやすく伝えることが重要です。
Z世代の部下を育成するうえで、「伝えたはずなのに伝わっていない」という場面は少なくありません。実は、その原因は相手の理解力ではなく、伝え方にあるケースも多いものです。特に仕事の意味や目的を理解したうえで行動したいと考える傾向があります。
そのため、管理職がこれまで当たり前に使っていた表現が、思った以上に伝わっていないことがあります。まずは、Z世代とのコミュニケーションで意識したい基本的なポイントを確認していきましょう。
・目的(Why)と背景をセットで伝える
・抽象的な指示ではなく具体的に伝える
・質問しやすい関係性をつくる
Z世代の部下に仕事を依頼する際は、作業内容だけでなく、その仕事を行う目的や背景もあわせて伝えることが大切です。
例えば、「この資料を作成してください」とだけ伝えるよりも、「来週の商談で使う資料なので、お客様に課題を分かりやすく伝えるために作成してほしい」と説明した方が、仕事の意味を理解しやすくなります。
管理職の立場からすると、目的まで説明するのは手間に感じるかもしれません。しかし、最初に背景を共有しておくことで認識のズレが減り、結果的に手戻りや修正も少なくなります。部下が納得して取り組める環境をつくることは、仕事の質を高めることにもつながります。
「なるべく早く提出して」「しっかり確認しておいて」といった表現は便利ですが、人によって受け取り方が異なります。
管理職にとっての「なるべく早く」が今日中であっても、部下にとっては数日以内かもしれません。こうした認識のズレを防ぐためには、期限や成果物の状態を具体的に伝えることが重要です。
例えば、
「資料を確認しておいて」
ではなく、
「本日の17時までに資料を確認し、修正点を3つ挙げて共有してください」
と伝えた方が、相手も行動しやすくなります。曖昧な表現を減らすだけでも、部下とのコミュニケーションは大きく改善します。
部下が指示待ちになってしまう理由の一つに、「質問しづらい」という心理があります。入社間もない社員や経験の浅い若手社員は、「こんなことを聞いたら怒られるかもしれない」「忙しそうだから話しかけづらい」と感じることがあります。
そのため、管理職側から相談しやすい雰囲気をつくることも大切です。例えば、「途中でも構わないので、一度見せてください」「分からないことがあれば早めに相談してください」といった一言を添えるだけでも、心理的なハードルは下がります。
質問しやすい環境が整うと、業務上のミスや認識のズレも早い段階で修正しやすくなります。結果として、部下の成長スピードも高まり、管理職自身の負担軽減にもつながるでしょう。
Z世代の部下を指導する際、「叱らない方がいいのでは」と考える管理職もいます。しかし、部下の成長を支援するためには、改善すべき点をきちんと伝えることも重要な役割です。
大切なのは、感情的に叱ることではなく、相手が納得し、次の行動につなげられるように伝えることです。少し伝え方を工夫するだけで、同じ内容でも受け取られ方は大きく変わります。
ここでは、Z世代の部下が納得しやすい叱り方のポイントを確認していきましょう。
・感情ではなく事実を伝える
・人格ではなく行動に焦点を当てる
・改善策を具体的に示す
部下にミスや問題行動があった場合、つい感情が先に出てしまうことがあります。しかし、「なんでこんなことをしたの?」「何度言えば分かるの?」といった言葉は、改善よりも防御反応を引き起こしやすくなります。
まずは起きた事実を冷静に伝えることが大切です。
例えば、
「報告が遅い」
ではなく、
「昨日依頼した案件の進捗報告が、期限を過ぎてから共有されていました」
と伝える方が、部下も状況を客観的に受け止めやすくなります。事実をベースに会話を進めることで、感情的な対立を避けながら改善点を共有できます。
Z世代に限らず、人は人格を否定されると強いストレスを感じます。
例えば、
「やる気がないのか?」
「社会人として失格だ」
といった言葉は、問題行動ではなく本人そのものを否定する表現です。
一方で、
「今回の報告が期限に間に合わなかった理由を確認したい」
「会議開始後の入室が続いているので改善方法を考えたい」
という伝え方であれば、話題の中心は行動になります。
漏る目的は相手を責めることではなく、行動を改善してもらうことです。その視点を忘れないことが、信頼関係を維持しながら指導するためのポイントになります。
注意だけをして終わってしまうと、部下は「結局どうすればよかったのだろう」と悩んでしまいます。
特に経験の浅い若手社員の場合、問題点は理解できても、改善方法までは分からないことがあります。
例えば、
「報連相をもっとしっかりして」
だけではなく、
「進捗に遅れが出そうな場合は、その時点でチャットを送ってください」
と具体的な行動を伝えることが大切です。
また、一方的に答えを与えるだけでなく、
「次回同じ状況になったら、どう対応するのが良いと思う?」
と本人に考えてもらうのも効果的です。改善策が明確になることで、部下は次に何をすべきかを理解しやすくなります。結果として、注意を成長の機会へと変えられるようになるでしょう。
叱り方のポイントを理解していても、実際の場面では感情が先に出てしまったり、伝えたい内容がうまく整理できなかったりすることがあります。
特に部下のミスが続いているときや、何度も同じ注意を繰り返しているときは、つい口調が強くなってしまうものです。しかし、その結果として部下が萎縮してしまっては、本来の目的である成長につながりません。
そこで活用したいのが、フィードバックの手法として知られているDESC法です。
DESC法は、相手を責めるのではなく、事実をもとに改善へ導くためのコミュニケーション手法です。感情に流されずに話を組み立てられるため、Z世代の部下への指導にも活用しやすい方法として知られています。ここでは、DESC法の基本的な考え方と、Z世代の指導に向いている理由について見ていきましょう。
・DESC法とは
・DESC法がZ世代の指導に向いている理由
DESC法とは、以下の4つのステップで会話を進めるコミュニケーション手法です。
D(Describe)
起きた事実を客観的に伝える
E(Express)
その出来事による影響や自分の考えを伝える
S(Suggest)
改善のための提案や要望を伝える
C(Choose)
相手の意見を確認し、今後の行動を決める
例えば、部下が会議に遅刻した場合、
「また遅刻したのか」
と伝えるのではなく、
「今週の会議で2回遅刻があったね」(Describe)
「開始時間が遅れるとチーム全体の進行に影響が出てしまう」(Express)
「次回からは開始5分前には準備を終えられるようにしてほしい」(Suggest)
「何か難しい事情があるなら教えてほしい」(Choose)
という流れで伝えます。順番に整理して話すことで、相手も内容を受け止めやすくなります。
DESC法がZ世代の指導に向いている理由は、人格ではなく行動に焦点を当てられるためです。Z世代は心理的安全性を重視する傾向があり、一方的に責められることに強い抵抗を感じることがあります。
しかしDESC法では、まず事実を共有し、そのうえで改善策を話し合います。そのため、「怒られている」という感覚よりも、「改善のための話し合いをしている」という受け止め方になりやすいのです。
また、最後に相手の意見を確認するステップがあるため、一方通行の指導になりにくい点も特徴です。管理職が答えを押し付けるのではなく、部下自身にも考えてもらうことで、納得感のあるコミュニケーションにつながります。
次は、実際の職場でよくある場面を例に、DESC法をどのように活用できるのかを具体的に見ていきましょう。
DESC法の流れを理解しても、「実際の職場でどう使えばいいのだろう」と感じる方もいるかもしれません。そこでここからは、管理職が直面しやすい場面を例に、具体的な伝え方を紹介します。
もちろん、すべてのケースで同じ言い回しを使う必要はありません。しかし、事実を伝え、影響を説明し、改善策を一緒に考えるという基本的な流れは、さまざまな場面で活用できます。
具体的には、以下のケースを見ていきましょう。
・会議に遅刻した場合
・業務ミスが続いた場合
・報連相が不足している場合
会議への遅刻は、本人だけの問題ではなく、チーム全体の業務にも影響を与えます。
とはいえ、「また遅刻か」「社会人としてどうなんだ」と感情的に伝えてしまうと、相手は反発したり萎縮したりしてしまう可能性があります。
そのようなときは、まず事実から伝えましょう。
例えば、
「今週の定例会議で2回遅刻があったね」
と事実を共有します。
続いて、
「会議の開始が遅れると、他のメンバーの予定にも影響が出てしまうんだ」
と影響を説明します。
そのうえで、
「次回からは開始 5 分前には準備を終えられるようにしてほしい」
と改善策を伝えます。
最後に、
「何か遅れてしまう理由があるなら教えてほしい」
と確認することで、本人が抱えている課題を把握できる場合もあります。
頭ごなしに叱るよりも、改善に向けた話し合いとして進める方が前向きな結果につながりやすいでしょう。
同じようなミスが続くと、管理職としてはつい厳しい言葉をかけたくなるものです。
しかし、
「何度同じミスをするの?」
という言葉だけでは、改善には結びつきにくいでしょう。
まずは、
「先週の見積書と今回の提案資料で、数値の入力ミスがあったね」
と具体的な事実を伝えます。
続いて、
「提出後に修正対応が必要になり、お客様にもご迷惑をおかけしてしまった」
と影響を共有します。
そのうえで、
「提出前にチェックリストを使って確認する方法を試してみないかな」
と改善策を提案します。
ここで大切なのは、ミスを責めることではなく、再発防止に目を向けることです。実際に現場では、本人の能力不足ではなく、確認方法や業務フローに原因があるケースも少なくありません。管理職としては、「なぜミスが起きたのか」を一緒に整理する姿勢が求められます。
若手社員の指導でよく聞かれる悩みの一つが、報告・連絡・相談が不足しているという問題です。特にZ世代は、自分なりに考えて行動しているつもりでも、上司から見ると情報共有が足りないと感じることがあります。
例えば、
「案件の進捗が分からず、取引先から問い合わせが来て初めて状況を把握したよ」
という事実を伝えます。
次に、
「進捗が見えないと、チームとしてサポートが必要かどうか判断できないんだ」
と影響を説明します。
そのうえで、
「進捗に変化があったタイミングで、一言チャットを送ってもらえるかな」
と具体的な行動を提案します。
さらに、
「どのタイミングで報告すればいいか迷うことはある?」
と確認することで、本人の認識とのズレを把握できます。
報連相の不足は、本人の意識だけでなく、職場のルールが曖昧なことが原因の場合もあります。だからこそ、叱るだけで終わらせるのではなく、どのような報告が求められているのかを具体的に伝えることが大切です。
DESC法を活用すると、感情的な叱責ではなく、改善に向けた建設的な対話がしやすくなります。結果として、部下との信頼関係を保ちながら成長を促せるようになるでしょう。
部下育成において、叱り方や伝え方は重要です。しかし、それだけでは十分とはいえません。管理職が目指すべきなのは、指示されたことだけをこなす社員ではなく、自ら考えて行動できる人材を育てることです。
特にZ世代は、「言われたことをやる」よりも、「納得して動く」ことを重視する傾向があります。そのため、一方的に答えを与え続ける指導では、なかなか主体性は育ちません。
ここでは、Z世代の部下が自分で考え、行動できるようになるための育成方法を紹介します。
・答えを与えすぎない
・考える習慣を身につけさせる
・思考プロセスを評価する
部下から相談を受けると、ついすぐに答えを教えたくなるものです。管理職としては、その方が早く解決できますし、失敗も防げます。
しかし、毎回答えを与えていると、部下は「分からなければ上司に聞けばいい」と考えるようになり、自分で判断する力が育ちにくくなります。
例えば、
「どうすればいいですか?」
と相談されたときは、
「あなたはどう考えている?」
と問い返してみるのも一つの方法です。
最初は戸惑うかもしれませんが、この積み重ねが考える習慣につながります。
もちろん、丸投げするのではなく、必要に応じて方向性を示しながらサポートすることが大切です。
主体性を育てるためには、結論だけでなく、その結論に至るまでの思考を整理する機会を増やすことが重要です。
例えば、問題が発生した際には、
「考えられる対応策は何がある?」
「それぞれのメリットとデメリットは?」
「あなたならどれを選ぶ?」
といった質問を投げかけてみましょう。
最初から正解を求める必要はありません。
むしろ、自分で選択肢を考え、比較し、判断する経験を積むことが大切です。
若手社員のなかには、失敗を恐れるあまり、自分で決断することに不安を感じる人もいます。
だからこそ、管理職は答えを教える人ではなく、考えるためのサポート役になることが求められます。
主体性を育てるうえで見落とされがちなのが、結果だけで評価しないことです。
例えば、提案した内容が採用されなかったとしても、そこに至るまでの考え方や準備が適切であれば、そのプロセスは評価する価値があります。
結果だけを見てしまうと、部下は失敗を恐れ、無難な行動ばかり選ぶようになるかもしれません。
一方で、
「よく調べてから提案してくれたね」
「その視点は良かったと思う」
といった声かけを行うことで、自分で考えることへの自信につながります。
主体性は一朝一夕で身につくものではありません。
日々の小さな成功体験や、考えたことを認めてもらう経験の積み重ねによって育まれていきます。
管理職が少し関わり方を変えるだけでも、部下の成長スピードは大きく変わる可能性があります。長期的な視点を持ちながら、一人ひとりの成長を支えていきましょう。
Z世代の部下への叱り方や伝え方に悩む管理職は少なくありません。価値観や働き方が多様化するなかで、これまでの指導方法だけでは通用しにくくなっている場面もあります。
しかし、だからといって特別な接し方が必要というわけではありません。
大切なのは、相手を一人の社会人として尊重しながら、改善すべき点はきちんと伝えることです。そして、その際には感情ではなく事実をもとに話し、具体的な改善策まで示すことが求められます。
また、仕事の目的や背景を共有し、納得感を持って取り組める環境を整えることも重要です。管理職にとっては当たり前に感じる内容でも、経験の浅い若手社員にとっては見えていないことが少なくありません。
さらに、部下の成長を考えるのであれば、答えを与え続けるのではなく、自ら考える機会をつくることも欠かせません。主体性は指示によって生まれるものではなく、自分で考え、判断し、行動する経験の積み重ねによって育まれていくものです。
Z世代の育成は、決して難しいことばかりではありません。
「なぜそうするのかを伝える」
「具体的に伝える」
「相手の考えにも耳を傾ける」
こうした基本的な姿勢を意識するだけでも、部下とのコミュニケーションは大きく変わります。
今回ご紹介した伝え方や叱り方のポイントを日々のマネジメントに取り入れながら、部下が安心して成長できる環境づくりに役立ててみてください。その積み重ねが、若手社員の定着や組織全体の成長にもつながっていくでしょう。